性行為において女性が性的苦痛を感じたり満足感が得られなかったりする状態は、多くの場合「女性性機能不全(Female Sexual Dysfunction)」、略して「FSD」と呼ばれます。
日本では「女性性機能障害」とも称され、男性のED(勃起不全)に比べて社会的な認知度が低く、情報が少ないため一人で悩みを抱え込みがちな問題です。
FSDは性的欲求の低下、性的興奮の困難、オルガズム(性的絶頂)に達しない、性交時の痛みなど、多岐にわたる症状を含みます。
これらの問題は個人の生活の質(QOL)を著しく低下させるだけでなく、パートナーとの関係性にも深刻な影響を及ぼす可能性があるのです。
この記事では、女性FSDがなぜ生じるのか、どのような種類があるのか、そしてどのように診断・治療していくのかについて、くわしく解説します。
また、パートナーとのコミュニケーションの重要性や日常生活で実践できるセルフケアもご紹介しますので、何か1つでもヒントを持ち帰ってみてください。
性の悩みは「秘め事」ではなく、専門家のサポートを得て解決できる健康問題なのです。
女性FSDの定義と5つのタイプ別特徴
女性FSDは、その症状によっていくつかのタイプに分類されます。
これらの分類は、診断や適切な治療法を選択する上で非常に重要です。
最新の診断基準であるDSM-5-TR(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版改訂版)では、主に以下の5つのカテゴリーに大別されます。
FSDの定義:苦痛を伴う性的機能の問題
FSDは単に「性的な問題」があるだけでなく、その問題によって女性自身が苦痛を感じている場合に診断されます。
つまり、性的な機能に何らかの不調があっても、それが本人にとって苦痛でなければFSDとはみなされません。
FSDの主要な分類(DSM-5-TRに基づく)
1. 性的関心・興奮障害
性的な関心や欲求が著しく低下したり、性的な刺激を受けても十分な興奮状態に達しにくい、または維持できない状態を指します。
具体的には、以下のような症状が見られます。
- 性的な思考や空想が減少、または欠如する
- 性行為を開始することや、パートナーの誘いに対して気が進まない
- ほとんど全ての性行為において、性的興奮や快感を得にくい
- 性的刺激(視覚、聴覚、触覚など)に対する反応が鈍い
- 性器の湿潤(潤滑)が不足する
2. オルガズム障害
十分な性的興奮や刺激を経験しているにもかかわらず、オルガズム(性的絶頂)に達しにくい、またはまったく達しない状態が続くことを指します。
オルガズムの感覚が著しく低下したり、遅延したりすることもあります。
この障害は、性的な刺激が不足している場合や、興奮そのものが不十分な場合とは区別されます。
3. 性器/骨盤痛・挿入障害
性行為時の痛みや挿入が困難である状態を指し、かつては「性交痛(Dyspareunia)」や「膣痙攣(Vaginismus)」として個別に診断されていましたが、現在は統合されています。
主な症状は以下の通りです。
- 挿入時、またはその前後に、持続的または再発性の膣への痛みや骨盤深部痛がある
- 膣への挿入を試みる際に、膣周囲の筋肉が不随意に収縮し、挿入が困難になる(膣痙攣)
- 性行為への関心が正常であるにもかかわらず、挿入に対する恐怖や不安が強い
- 性行為の試みを回避する
4. 物質・医薬品誘発性性機能障害
特定の薬物や物質の使用、用量変更、または中止によって性機能障害が引き起こされている状態です。
5. その他の特定される性機能障害・特定不能の性機能障害
上記のカテゴリーに厳密には当てはまらない、または診断基準を完全に満たさないが、性的な苦痛を伴う問題がある場合に用いられる診断です。
これらのFSDは単独で発生することもあれば、複数の症状が複合的に現れることも少なくありません。
女性FSDの複雑な原因:身体的・心理的・社会的な側面
女性FSDの原因は一つに特定できるものではなく、身体的、心理的、人間関係・社会的要因が複雑に絡み合って生じることがほとんどです。
身体的な原因
性機能は、ホルモン、神経、血管などの身体システムによって大きく影響されます。
ホルモンバランスの変動
女性の体は年齢やライフステージによってホルモンの分泌が変わり、その影響が性欲や性機能に表れることがあります。
更年期には、閉経にともなってエストロゲンの量が減っていきます。
膣の粘膜が薄くなって乾燥しやすくなったり、弾力がなくなって痛みやかゆみを感じやすくなったりするため、性交時に違和感や痛みを覚える人も少なくありません。
授乳中はプロラクチンというホルモンが増える影響で、性欲が落ちたり膣が乾燥しやすくなったりするケースがあります。
月経周期やピルの使用によってもホルモンの状態は揺れ動きます。
人によって感じ方は異なりますが、その時期ごとに気分や性欲に変化が出るのは自然なことです。
慢性疾患
糖尿病では神経や血流の障害によって性器の感覚が鈍くなり、潤いが不足したりオルガズムに達しにくくなることがあります。
高血圧や心血管疾患は、血流が悪化して性器への血流が減少し、性的な興奮が妨げられる原因です。
また、甲状腺の機能に問題がある場合には、ホルモンバランスが乱れて性欲の低下や疲労感につながるといわれています。
薬剤の副作用
抗うつ薬(SSRIなど)は、性的欲求を下げたりオルガズムが得にくくなったりするなど、性機能に強く影響することが知られています。
さらに、降圧剤や抗ヒスタミン薬、抗精神病薬といった薬は、性機能に影響を与える場合があります。
婦人科系疾患
婦人科系の疾患は、性機能や性生活に影響を及ぼすことがあります。
たとえば、子宮内膜症や子宮筋腫、骨盤内炎症性疾患は、慢性的な骨盤痛や性交時の痛みにつながることが多いです。
膣炎や膀胱炎、性感染症などでは、外陰部の痛みやかゆみ、性交痛を引き起こすケースも見られます。
また、処女膜強靭症や膣痙攣などは、物理的に挿入を難しくし、強い痛みの原因となる場合も少なくありません。
神経学的疾患や外傷
脊髄損傷など、性器への神経伝達に影響を及ぼす病態は、性的感覚やオルガズムに影響を与える可能性があります。
出産や外科手術の影響
出産に伴う会陰切開や裂傷、あるいは子宮摘出など骨盤内で行われる手術は、性器の感覚や解剖学的な構造に変化を及ぼすことがあります。
傷の瘢痕や筋肉・神経への影響によって、性交時に痛みを感じやすくなったり、潤滑の低下や感覚の鈍さが生じるケースも少なくありません。
また、こうした身体的変化は性的快感や満足度の低下につながるだけでなく、パートナーとの関係や心理的な側面にも影響を及ぼすことがあります。
そのため、症状が続く場合には医療機関での相談や適切なケアが大切です。
膣の乾燥・萎縮(閉経関連尿路性器症候群 GSM)
閉経後女性ホルモン減少による膣の萎縮は、潤滑不全を招き、性交痛の一般的な原因となります。
心理的な原因
脳は性の最大の器官と言われるように、心理状態は性機能に深く関わっています。
- ・ストレス、疲労、うつ病、不安障害
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日常生活における過度のストレスや疲労、精神疾患は、性的欲求を低下させ、興奮やオルガズムを妨げることがあります。
- ・過去の性的トラウマや虐待
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過去の性的に嫌だった経験は、性行為に対する恐怖心や嫌悪感を深く植え付け、FSDの根本的な原因となることがあります。
- ・自己肯定感の低さ、ボディイメージの悩み
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自分の身体に対する自信のなさや、性的な魅力に対する不安は、性行為中の心理的なブロックとなり得ます。
- ・反性的な教育や価値観
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性を「汚らわしいもの」として育った環境や、性に関するネガティブな情報ばかりに触れてきた経験は、性行為への関心を著しく低下させることがあります。
人間関係・社会的な原因
パートナーシップや社会環境も女性の性機能に影響を与えます。
- ・パートナーとのコミュニケーション不足や関係性の問題
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性に関する率直な対話ができない、パートナーシップにおける葛藤、信頼関係の欠如は、性的欲求の低下や満足感の欠如につながります。
- ・パートナーの性機能障害(EDなど)
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パートナーのEDにより女性側が「自分に魅力がないのかも」と自信を失うことも。結果的に、女性自身のFSDを引き起こす可能性があります。
- ・文化的なタブーや誤った性の知識
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性に関するオープンな議論が少ない文化や、性教育の不足は、女性が性の悩みを一人で抱え込み、適切な情報やサポートにアクセスできない状況を生み出します。
- ・性的な経験不足
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性に関する知識や経験が不足していることで、自身の性的反応やパートナーとの性のあり方について不安を感じることがあります。
女性FSDの具体的な症状とセルフチェック
女性FSDの症状は多岐にわたり、人によって現れ方が異なります。
自身の症状を理解することは、適切な対処や医療機関への相談の第一歩となります。
各種類のFSDにおける具体的な症状
性的関心・興奮障害
- 性的なことを考えたり、空想したりすることがほとんどない。
- パートナーからの誘いがあっても、性行為に対して興味や意欲が湧かない。
- 「セックスは面倒」「したくない」と感じることが多い。
- 性的刺激を受けても、性器が湿潤しにくい、またはまったく濡れない。
- 性的な興奮や快感を感じることが難しい。
- 身体は反応しないが、頭では「興奮したい」と思っている、といった心理と身体のズレを感じる。
オルガズム障害
- 十分な前戯や刺激があっても、オルガズムを感じることができない。
- オルガズムに達するまでに非常に時間がかかる、または感覚が著しく鈍い。
- かつてはオルガズムを感じていたのに、最近は感じなくなった。
性器-骨盤痛・挿入障害
- 性器への挿入時に鋭い痛みや灼熱感がある(浅い痛み)。
- 性行為中に骨盤の奥の方に鈍い痛みや圧迫感がある(深い痛み)。
- 性交後も痛みが続くことがある。
- 特定の体位でのみ痛みを感じる。
- 性器への挿入を試みる際に、自分の意思とは関係なく膣の筋肉が強く収縮し、挿入が困難になる、またはできない。
- 性器に触れられること自体に強い恐怖心や不安を感じる。
- 婦人科の診察(内診)も恐怖で受けられない。
医療機関を受診する目安
以下の項目に当てはまる場合は、FSDの可能性があるため、専門医への相談を検討しましょう。
- 上記のような症状が6ヶ月以上続いている。
- 性的な問題が原因で個人的な苦痛を感じている。
- パートナーとの関係性に悪影響が出ていると感じる。
- 性に関する悩みが、日常生活の質を低下させている。
- 過去に性的なトラウマがあり、それが原因で現在の性生活に影響が出ていると感じる。
恥ずかしさや戸惑いを感じるかもしれませんが、FSDは治療可能な医学的な問題です。
一人で抱え込まず、専門家のサポートを求めることが解決への第一歩です。
女性FSDの診断プロセス:専門医との連携
女性FSDの診断は、症状の多様性と原因の複雑さから、丁寧な問診と多角的な視点が必要です。
一般的には、婦人科、泌尿器科、性機能外来、心療内科、精神科などが相談先となります。
丁寧な問診とカウンセリング
医師や専門カウンセラーは、まず詳細な問診を通じてあなたの状況を把握します。
- ・性歴・病歴・服薬歴
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これまでの性経験、性に関する悩み、現在の健康状態、服用している薬(市販薬、サプリメント含む)、過去の手術歴などを詳しく聞かれます。
特に、抗うつ薬などの服用はFSDの原因となる可能性があるため、正直に伝えましょう。
- ・生活習慣や心理状態
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ストレス、睡眠、食生活、運動習慣、飲酒・喫煙習慣なども確認されます。
また、現在の精神状態(うつ、不安など)や過去のトラウマについても尋ねられることがあります。
- ・パートナーシップに関するヒアリング
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パートナーとの関係性、コミュニケーションの状況、性に関する認識や期待なども重要な情報です。
必要に応じて、パートナーも交えてカウンセリングを行う場合もあります。
身体診察と検査
問診でFSDが疑われる場合、身体的な原因を除外するため、あるいは特定するために、以下の診察や検査が行われることがあります。
- ・婦人科的診察
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外陰部・膣・子宮・卵巣の状態を目視や触診で確認し、膣の乾燥や炎症、萎縮の有無、痛みの部位などを調べます。また、性交痛や膣痙攣がある場合には、痛みの程度や部位を特定するための診察もします。
- ホルモン検査
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血液検査で女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロンなど)や男性ホルモン(テストステロン)、甲状腺ホルモンなどのレベルを測定し、ホルモンバランスの異常がないかを確認します。
- ・感染症検査
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膣炎や性感染症が疑われる場合、膣分泌物の検査が行われます。
- その他
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糖尿病や高血圧などの基礎疾患がないかを確認するための一般的な血液検査、必要に応じて神経学的検査などが行われることもあります。
専門医の選び方
FSDはデリケートな問題であり、安心して相談できる医療機関を選ぶことが大切です。
- ・専門性を確認する
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性機能障害を専門とする婦人科、泌尿器科、または性機能外来を持つクリニックを探しましょう。
近年は女性の性に関する悩みに特化したクリニックも増えています。
- ・女性医師の有無
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女性医師による診察を希望する場合は、事前に確認しましょう。
- ・カウンセリング体制
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心理的な要因が大きい場合も多いため、専門のカウンセラーが在籍しているか、あるいは連携している医療機関であれば、より包括的なサポートが期待できます。
- ・口コミや評判
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実際に受診した人の意見も参考にすると良いでしょう。
女性FSDの効果的な治療法とアプローチ
女性FSDの治療は、原因が多岐にわたるため、単一の方法ではなく、複数のアプローチを組み合わせることが一般的です。
医師やカウンセラーと協力し、あなたに最適な治療計画を立てていくことが重要です。
薬物療法
身体的な原因が特定された場合や、特定の症状を緩和するために薬物療法が用いられます。
- ・ホルモン補充療法(HRT)
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- 全身療法
閉経後の女性ホルモン(エストロゲン)低下による症状全般に対して、内服薬や貼り薬で全身にホルモンを補充する方法です。
ホットフラッシュなどの更年期症状だけでなく、性欲低下や膣の乾燥にも効果が期待できます。 - 局所療法
膣の乾燥や萎縮による性交痛が主な症状の場合、膣内に直接エストロゲンを塗布するクリームや膣錠が用いられます。
全身への影響が少ないため、全身療法が適さない場合にも選択肢となります。
- 全身療法
- ・性欲改善薬
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海外では、性的欲求低下障害(HSDD)の治療薬として、フルバンセリン(Flibanserin)やブレメラノチド(Bremelanotide)などが承認されています。
これらは脳の神経伝達物質に作用し、性欲を改善するとされますが、日本では未承認であり、副作用や効果の個人差も考慮する必要があります。
- ・原因疾患に対する治療薬
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糖尿病や甲状腺機能障害など、FSDの原因となっている基礎疾患がある場合は、その治療を優先することでFSDの症状も改善することがあります。
- ・潤滑剤の使用
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膣の乾燥による性交痛や不快感には、水溶性の潤滑剤が非常に有効です。
薬局などで手軽に入手でき、性交時の摩擦を減らし、痛みを緩和します。
心理療法・カウンセリング
心理的、関係性的な要因が大きい場合に有効なアプローチです。
- ・性カウンセリング(セックスセラピー)
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性機能障害に特化したカウンセリングで、性に関する知識の習得、誤った思い込みの修正、性行為のテクニックや前戯の工夫、コミュニケーションの改善などを指導します。
- ・認知行動療法 (CBT)
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性に関するネガティブな思考パターンや感情を特定し、より建設的な思考や行動に変えていくことを目指します。不安や恐怖を克服するのに役立ちます。
- ・カップルカウンセリング
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パートナーシップの問題がFSDの原因となっている場合、カップルでカウンセリングを受けることで、お互いの理解を深め、コミュニケーションを改善し、共同で問題解決に取り組むことができます。
- ・トラウマケア
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過去の性的トラウマがFSDに影響している場合、EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)などの専門的なトラウマケアが有効な場合があります。
ライフスタイルの改善とセルフケア
日々の生活習慣を見直すことも、FSDの改善に繋がります。
- ・バランスの取れた食生活と適度な運動
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肥満や生活習慣病はFSDのリスクを高めます。
栄養バランスの取れた食事と定期的な運動は、全身の健康を促進し、性機能にも良い影響を与えます。
- ・十分な睡眠とストレス管理
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慢性的な疲労やストレスは性欲を著しく低下させます。
十分な休息をとり、リラクゼーション法(瞑想、ヨガ、深呼吸など)を取り入れてストレスを軽減しましょう。
- ・禁煙、節酒
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喫煙は血管を収縮させ血流を悪化させ、過度な飲酒は性的な興奮を抑制する可能性があります。
- ・骨盤底筋トレーニング
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骨盤底筋を鍛えることで、膣の血流が改善され、性的感覚の向上やオルガズムの質を高める効果が期待できます。
また、膣痙攣の改善にも役立つことがあります。
- ・セクシャルトイの活用
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自分自身の身体の感覚や反応を探求するために、セクシャルトイを使用することは、性的興奮やオルガズムへの理解を深めるのに役立ちます。
その他のアプローチ
- 医療機器を用いた治療
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最近では、膣の乾燥や萎縮、性的感覚の低下に対して、レーザー治療や高周波治療などの医療機器を用いたアプローチも研究されています。
これらは膣のコラーゲン生成を促進し、血流や弾力性を改善する効果が期待されます。
- 前戯の工夫、性交体位の見直し
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パートナーとの間で、性行為における前戯の時間や内容、体位について話し合い、より快感を得られる方法を試すことも重要です。
これらの治療法の中から、自身の症状や原因、ライフスタイルに合ったものを専門医と相談しながら選択することが、FSDを克服するための鍵となります。
パートナーとのコミュニケーション:FSDを乗り越えるために
女性FSDは、女性だけの問題ではなく、パートナーシップ全体に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、パートナーとのオープンで建設的なコミュニケーションは、FSDを乗り越える上で極めて重要です。
性の悩みは一人で抱え込まないこと
多くの女性が性の悩みを「恥ずかしい」「話しにくい」と感じ、一人で抱え込んでしまいます。
しかし、FSDは医学的な問題であり、適切なサポートがあれば改善が見込めます。
オープンで建設的な対話の重要性
パートナーにFSDの症状や苦痛を伝えることは、勇気のいることです。
しかし、曖昧な態度や沈黙は、パートナーに誤解や不安を与える可能性があります。
- ・タイミングと場所を選ぶ
-
落ち着いて話せる時間と場所を選びましょう。
- ・「私」を主語に伝える
-
「私がどう感じているか」を具体的に伝えます。
例えば、「性行為中に痛みを感じていて、不安な気持ちになる」といったように、非難ではなく感情を伝えることが大切です。
- ・FSDについて理解を求める
-
可能であれば、FSDに関する情報を一緒に調べたり、この記事のような情報を共有したりして、パートナーにもFSDがどのようなものか理解してもらいましょう。
相互理解と共感の促進
パートナーはあなたの苦痛を理解し、共感しようと努めることが大切です。
- ・傾聴する
-
パートナーは、あなたの話を中断せず、最後まで注意深く聞く姿勢を示しましょう。
- ・感情を受け止める
-
「それは辛かったね」「悩んでいたんだね」といった共感の言葉を伝えることで、あなたは安心感を得られるでしょう。
- ・非難しない
-
FSDは誰のせいでもありません。
互いを非難するのではなく、一緒に解決策を探す姿勢が重要です。
FSDは「二人の問題」と捉える
FSDは性的な親密さや関係性の質に影響を与えるため、「個人の問題」ではなく「二人の問題」として捉えることが解決への近道です。
- 協力し合う姿勢
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パートナーも治療やセルフケアに積極的に協力し、サポートする姿勢を見せることが、あなたの回復を大きく後押しします。
- プレッシャーを与えない
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パートナーは、性行為を強要したり、プレッシャーを与えたりしないよう注意しましょう。
性的関係が一時的に中断しても、他の方法で親密さを保つことができます。
- 専門家の力を借りる
-
必要であればカップルカウンセリングなど、専門家のサポートも活用しましょう。
専門家は、二人のコミュニケーションを円滑にし、より良い解決策を見つける手助けをしてくれます。
オープンな対話を通じて、お互いの理解を深め、支え合うことで、FSDという困難を乗り越えより健全で充実したパートナーシップを築くことができるでしょう。
女性FSDに関するよくある質問(FAQ)
- FSDは誰にでも起こりうる症状ですか?
-
はい、FSDは幅広い年代の女性に起こりうる症状です。
米国では約12%の女性にFSDが見られると報告されており、その頻度は決して少なくありません。
特に、更年期以降の女性ホルモン減少による膣の乾燥や萎縮は、FSDの一般的な原因となります。
- 病院に行くのが恥ずかしいのですが、どうすればいいですか?
-
FSDに関する悩みは非常にデリケートなため、受診をためらう気持ちは自然なことです。
しかし、FSDは治療可能な医学的問題であり、一人で抱え込む必要はありません。
まずは、信頼できる医療機関を探すことから始めましょう。
オンライン診療を行っているクリニックもありますので、そうした選択肢も検討してみてください。
- 市販薬やサプリメントでFSDは改善しますか?
-
市販の潤滑剤は膣の乾燥による性交痛の緩和に有効ですが、FSDの根本的な治療にはなりません。
サプリメントについても、FSDに対して科学的に効果が証明されているものはありません。
安易な自己判断で市販薬やサプリメントに頼るのではなく、まずは医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。
重大な病気が隠されている可能性もあります。
- パートナーにどう伝えれば良いでしょうか?
-
パートナーにFSDのことを伝えるのは勇気がいりますが、解決のためには不可欠なステップです。
非難する形ではなく、「私が今、こんなことで悩んでいる」「セックスの時に痛みを感じていて辛い」といったように、「私」を主語にして自分の感情を伝えることから始めましょう。
FSDに関する情報を一緒に見て、理解を深めてもらうのも良い方法です。
パートナーには、あなたの話に耳を傾け、共感し、一緒に解決策を探す姿勢が求められます。
- 更年期とFSDは関係がありますか?
-
はい、更年期はFSDと深く関係しています。
閉経に伴う女性ホルモン(エストロゲン)の急激な減少は、膣や外陰部の萎縮、乾燥、弾力性の低下を引き起こし、「閉経関連尿路性器症候群(GSM)」として総称される様々な症状(膣の痛み、かゆみ、性交痛、尿路系の問題など)を引き起こします。
これらは性的関心・興奮障害や性器-骨盤痛・挿入障害の主要な原因となります。
ホルモン補充療法(HRT)などが効果的な治療法となることがあります。
おわりに:希望を捨てずに専門家へ相談を
女性FSDは、多くの女性が密かに抱える性の悩みであり、その原因も症状も多岐にわたります。
しかし、この問題は決して一人で抱え込むべきものではありません。
医学的なサポートやカウンセリング、そしてパートナーとの協力によって、症状の改善やより豊かな性生活を取り戻すことは十分に可能です。
この記事を通じて、FSDがどのようなもので、どのような対処法があるのか、そして専門家の助けを求めることの重要性を理解していただけたなら幸いです。
勇気を出して一歩を踏み出し、専門医や信頼できるカウンセラーに相談してみましょう。